──失恋した。
今年の中で一番の悲劇
片想いの終止符の打ち方が恋人ではなく失恋

散々泣いたので目は赤く腫れぼったい。それを化粧で隠したが、化粧はそんなうまくないので隠し切れてない気がする
はぁ…と溜息を吐いて目の前の扉を開けば、カランカランと来店を知らせる音が聞こえる

店内は薄暗いが何処かオシャレで私のお気に入り
けれどここに一人で来ることは初めてで少しドキドキ。
でも、友人とは来てるから…常連に近いのかな?

どこに座ろうかとキョロキョロと見回せばシェーカーを手にするマスターと目が合う
ニコリと笑ってカウンターを指すマスター。促されるままにカウンター席に腰掛ける


「今日はひとり?」

「えぇ…気まぐれだったから友人が都合がつかなくて」

「いつもの?」

「いや…マスターのおまかせで」


了解とニコリと笑うマスターに苦笑を返す
テキパキとシェーカーに入れていくマスターを横目に携帯をみる
──失恋かぁ…。
何年の片想いだったのだろうか。確か…まだ学生だった頃
他の女の子よりも仲が良かった自覚はある
だけど、彼は私のことを親友としてしか見てなかったようで…
二人で遊ぶことなんで常だったし…それでいて、やましいことも一切なかった。…その時点で気付くべきだったのかな、なんて今更ながら思うよ
次会うときどういう顔して会えばいいかな?


「はい。お待たせ」


彼との思い出に浸っていれば、出来たようで目の前に深紅色をしたカクテルが出される
カクテルに全然詳しくない私はこれがどういうカクテルなのかさっぱり
深紅だからカシス系なのはわかるけど…


「カシスソーダだよ」

「カシスソーダ…」


首をかしげていれば、優しい声でそう答えてくれるマスター。そういえば、カシス系はまだ飲んだことなかったかも…と一口飲んでみる
甘くさっぱりとした味が口の中で広がる
いつも飲んでるカクテルとはまた違って嵌りそう。


「ねぇ、マスター。このカクテル言葉って」

「ん?あぁ…自分で調べてみて?」


まだまだカクテルに嵌って少ししか経ってないからカクテル言葉は全然知らない。マスターに聞いてみれば自分で調べてと珍しく答えてくれない
いつもなら、なんでもわからないことを教えてくれるのに…
訳も分からず携帯を取り出し検索をかける
──なんかマスターの前で調べるのって恥ずかしいな
あった…とその文を読んで目を見開く。だってそこにあったのは

『貴方は魅力的』

はっとしてマスターを見ればニッコリと微笑んで私をみるマスターの姿が
マスターのその表情を見るのは初めてで思わず息をのむ…


ちゃんはこんなにも魅力的なのにフるなんて」

「……マスターずるいよ」

「ん?」


マスターから言われた一言が嬉しすぎて…でも悲しくて
視界が歪む。ぶわりと溢れる感情が抑えきれない
散々泣いた筈なのに…。こんな時にそういうことを言うマスターはズルい
きっとこんなに涙腺が緩いのはお酒のせいだ…きっと


ちゃんは笑ってる方が似合うよ」

「…すぐに泣き止むなんて、むり」


指ですくっても止めどなく溢れてくる涙
マスターに静かに頭を撫ぜられる。その手は凄く優しくて…。
本当ズルい人


ちゃん。俺、勘右衛門って言うんだ」


是非勘ちゃんって呼んで。軽く頷いて勘ちゃん…と静かに呟けば、なに?と優しく返事をしてくれる
貴方のその優しさに漬け込んでもいいですか?


カシスソーダの甘い誘惑
 その後付き合い始めましたけど何か…?





─後書き─
元ネタ↓
嗚呼、桜か。
管理人:伊呂波さんのtwitterより
@1682oedo: カクテル言葉ってあるじゃん?おしゃれなバーとか行くとマスターが今のお客さんの気持ちに合わせたカクテルとか出してくれるじゃん?失恋して泣いてるとこにバーテン勘ちゃんがそっとカシスソーダとか出してきてくれるじゃん?カクテル言葉は『貴方は魅力的』って意味じゃん?抱かれたいじゃん?誰か書
ということで、書きました。満足ですかwww?←