兵助達に連れられてきた何処かのレストラン
和食メインのお店だった


「で、何時まで握ってんの?」

「…さては兵助、久々に逢ったからって独占欲か?」

「違うのだ!」


慌ただしく離された手に多少の寂しさを覚え
必死に否定をする兵助に懐かしさを覚えた
あぁ…こんな日常だった気がする


「兵助、顔真っ赤にしてたら説得力無いんじゃないかな?」

「おほー兵助真っ赤」


雷蔵にそう突っ込まれ、ハチにも言われたからか顔をペタペタと触る兵助に笑いが込み上げる
私は掴まれていたからか何も突っ込まれない
…始めに言い出したのが私だからか


「はいはい、座って座って」

「2組はからかうの好きだよねー」

「勘ちゃん酷い、私も2組」


勘右衛門がソファー席の置くに座る
そのままも座れば、兵助もソファー席へ腰掛ける
──まて、挟まれた


「ちょ、タンマ。この席代わって」

「「「無理」」」


声を揃えて拒否の声を上げる三郎と雷蔵とハチを睨む
因みに私の前は三郎だ


「兵助何でこっち座ったの!?」

「いや、三郎の隣とか何されるかわかんないし」

「酷いぞ兵助」

「まあまあ、二人とも…それより注文決まった?」


バチバチとやりはじめそうな三郎と兵助を雷蔵は咎め、メニューも持って注文を急かす
そのままの勢いで雷蔵はベルを鳴らした


「…ご注文を承ります」

「唐揚げ定食とロースカツ定食と十割そばとカキフライ定食」

「あ、被った…なら親子丼」

「俺、豆腐定食で」

「かしこまりました。只今の時間全品サラダ・ドリンクサービスとなっておりますのでご利用ください」


と軽く一礼して去る店員
さてと、と立ち上がるのは雷蔵、三郎、八左ヱ門、兵助の4人
勘右衛門とが立たない理由はソファー席故に動き辛いからだ


「兵助ー俺烏龍茶」

「私アイスミルクティ!混ぜたら、ぶっ殺す」

「そんなことしないのだ」


と仲良く去っていく4人に微笑む
──その光景は懐かしさを覚えたが、いつの記憶かさっぱりだ




「なに?勘ちゃん」


勘ちゃんと二人っきり。隣同士の私たちはお互いに顔を見合わせる
耳にピアスが開いている私と勘ちゃん。私は勘ちゃんがピアスを開けた理由を知らない
ただの好奇心だったのかもしれないし、私みたいに傷ついたからかもしれない
それを聞く気にはなれなくて、勘ちゃんが口を開くのを待った


「兵助のこと好き?」

「へ…?」

「幼馴染みなんでしょ?」


どうなのかなーって、と首をかしげる勘ちゃんに私自身も首をかしげる


「…わかんない」


いきなりそんなこと言われても、兵助と逢ったのは実に3年ぶり
ちょっと前まで嫌っていた人間を好きかと言われても返答に困る
──実際嫌っていた訳ではなく寂しかったという感情が正しかったとしても


「じゃあ俺たちは?」

「達…?勘ちゃんとか雷蔵とかってこと?」

「そう」

「…わかんないけど何故か懐かし・・・く思う」


あり得ないよね、だって私はみんなと会うの初めてなのに…
と続くはずだった言葉は勘ちゃんに遮られた
勘ちゃんは驚いた顔をしてこちらを見ていたからだ

その表情はあの日兵助がしていた表情に似ていた
ホント…なんなのその顔は。まるで私が全部悪いみたいじゃない。


「持ってきたよ」


飲み物が入ったコップとサラダが入った皿を持って戻ってきた4人
全てを机に置き席につく
私のは三郎が持ってきてくれたようだ
やな予感…
ジトッと三郎を見れば何もしてないと言われた


「入学を祝ってー」


ブーッブーッ

乾杯でもしようと思ったのだろうかハチがコーラの入ったコップを持ってかがげる動作をしたとたんに雷蔵の携帯が鳴る
青い携帯に群青のキーフォルダーが付いている
──そういえば三郎にも付いていた気がする


「ごめんね…もしもし?先輩」


どうやら相手は先輩だったようで雷蔵は一度席を立とうするが同時に耳から聞こえたであろう言葉に驚きを隠せずそのまま座ってしまう
最後には、わかりましたと半ば諦めるように頷く雷蔵にまさか…と呟くのは三郎
いったい何があると言うんだ


「大変だ!先輩達が来るって」


たった一言だった
その一言で兵助とハチはガタンッと立ち上がり、一人は店員へ、もう一人は水を注ぎにいく


「先輩ってそんな怖いの?」

「いや…怖くはないんだけど条件反射?」


と答える勘ちゃんも若干血の気が引いている


「いいか、立花先輩と七松先輩には逆らってはいけない」


何されるか解んないからなと脅す三郎に笑い飛ばす
意味がわかんない
──でも、七松ってどっかで聞いたとこある…どこだっけ?
その理由を知るのはあと少し

先輩達が来る、ただそれだけで席が替わった
否、私がお手洗いに立ったと言うこともあるだろう
元々座っていた6人席と隣の6人席を陣取っている
スペースを考えてか左右と真ん中に隙間ができており誰でも通り抜けられた


「…で、私が席替わる必要は?」


兵助の隣であることには違いない
ただ、兵助が右隣から左隣へ替わっている
因みに左から
勘右衛門、兵助、、雷蔵、三郎、八左ヱ門だ

睨むように兵助を見れば、何?と何事もないように振る舞う
あぁ、悪いなんて思ってないわけね
トンッと軽く横腹をド突く
うっと言う声と同時に軽く頭を下げる兵助
そんなに痛くしてないんだけど


「お、ここか」


その声と共に目の前に現れたのは同じ制服を着た2人組だった


「こんにちは先輩」

「あぁ、入学おめでとう」


キリッとしたつり目で若干癖のある髪を持つ優しそうな顔の男と
同じつり目でも若干心配そうな表情をしていて色素の薄い髪を短めに揃えた頬に絆創膏を貼った男
二人とも始めてみるのにドクリと心臓が跳ねる
──まるで久々に会った友のように…

そのまま勘ちゃんと兵助の正面に座る二人に三郎がヤバいと言う表情をする


「君は…」


兵助の正面に座った男に驚いた表情をされる
この表情…なんで私を見て皆同じ表情をするの…?


「俺の幼馴染みで西島です」

「初めまして」


何で反応を示しているのか…驚きの表情は終われない


「僕は…「先行くなんて酷いぞお前ら!」


彼の言葉を遮り現れたのは4人

美形におっさん(制服着てたから一個上だろうけど)に強面に…小平太さん

ふと、三郎に言われたことを思い出す
──あぁ、七松って聞いたことあると思ったけど…彼だよね


「見かけない顔だな」

「兵助の幼馴染みで…「じゃないかっ!」


今度は三郎が私の紹介をしようとすれば、兵助の正面にいる人との会話を終えたのか私を見て驚く小平太さん
…みんなこっち見んなよ。先輩方も早く座ろうよ


「知り合いか?」

「迷惑を…かけた」

「詳しく聞かせてよ小平太」

「先輩その前に自己紹介してあげてくださいよ」

「おお、忘れていた」


左から、食満留三郎(留でいいと言われたので留先輩で)、善法寺伊作で七松小平太、中在家長次、潮江文次郎、立花仙蔵だ
と自己紹介をされ自分も自己紹介をすれば興味深そうにこちらを見る立花先輩がいた

…どうしよう。目の前に並んだ料理に手がつけられない










後書き

久しぶりの更新です。