き誇る闇の花


見付からない!

なんでこんなに探しているのに見付からないの!?


***


「おはよう」

「おはよう…澪」

「最近寝てる?隈が出来てる」

「大丈夫っ!」

「それならいいけど」



流石澪……誰よりも私の事を見ている

少し休もうかな…これ以上心配かけたくないし……でも、闇の記憶の存在が分かるまで諦めない!

だから、ごめんね澪


***


「夕維ちゃん?」

「へっ?」

「最近元気ないよ」

「そんなことないよ」

「じゃあ、一つ質問いい?」

「何?……藤岡さん」

「この前岡崎さんにも聞いたんだけど……誠って言う人知ってる?」

「う〜ん誠って言われてもな…どの誠のこと言ってるのか分からないからね」

「アタシたちの2つ上でカッコいい男の子なんだけど…」



2つ上って言ったらやっぱり誠さんだよね…でも、カッコよかったっけ?
その人をイケメンかイケメンじゃないかは人それぞれ違うからね…



「うーん分からないな」

「ならいい───」

「夕維っ!!」



あれ?前にもこんなことあった気がする
ここの立場がわたしじゃなくて…澪で



「帰ろ?」

「……ええ…じゃあね、藤岡さん」

「ええ」



また邪魔された……あの反応は知ってるとしか考えられないんだけど……



「沙姫には気を付けろって言ったはずなんだけど?」

「───盗み聞き」

「人のこと言えないよ夕維」

「ありがとう」

「別に……」



夕維が悩んでいることって一体なんだろう?
僕には頼れないことなのか?
たまには、僕に頼ってくれたっていいのに……



「そうだ!後で、澪ん家行くね」

「ん?いいけど……って、合鍵渡そうか?」

「本当?」



澪は生徒手帳から鍵を取り出す夕維の手に乗せた



「いつでも来れるだろ?……私はそっちの方が助かる」



どこぞのバカップルが言うような台詞を吐き、澪の一人称が私に変わった。



「うん!じゃあ、行かせてもらうね」



とっとっとっと音を経てながら夕維は自分の教室に入って行った


夕維に鍵を渡したから少し出かけるか……ケータイに連絡いれとけば夕維なら大丈夫そうだし

カバンに財布を詰め鍵を掛けて澪は外に出た。



「あっ!澪ちゃんこんにちは」

「こんにちは珱さん」

「翔兄元気?」

「翔兄?」



元気だよって普通に言いたかった……ごめんね珱姉、全てが終わるまで待っててね



「あーごめん、結城先生のことだよ」



知ってるよ。そんなこと、だって僕の従兄妹でもあるんだもん



「結城先生ですか?元気ですよ」

「マジで!?最近会ってなかったからね」

「そうなんですか?」

「あぁ。………出掛けようとしてたんだよね。ごめんね」

「大丈夫ですよ」

「バイバイ澪ちゃん」

「バイバイ」



澪はゆっくりと歩いて行き珱の前を通り過ぎた。

その時間がやけに長かった気がする……何でだろ?

向かうのは公園

昔夕維や誠、悠に姉ちゃん達とよく遊んだ公園

何かの手掛かりがあるかもしれない



「懐かしいな……」



ドンッ



「へ?」



前見てなかったからぶつかったみたいだけど……大丈夫かな?



「大丈夫?」

「はい…貴女こそ……!!……澪お姉ちゃん?」

「悠……なんで…?」



なんで、僕のこと分かるの?

なんで?



「悠なんで私の記憶あるの……?」

「当たりま───!!……嘘だろ?まさか………すみませんでした」



悠は何かに気付いたのか何かブツブツと呟いている



「しらばっくれるな!」

「ごめんなさい!!この事は自分で何とかしてください!」

「…待って、じゃあ誠兄は…?」



お願いだから…教えて

久々の再会がこんなのは僕嫌だよ…?



「……僕からは何も言えません」



悠は最後にもう一度“ごめんなさい”と呟き澪の横を走って通り過ぎた

澪は何も考えられずにいた

今の事が頭の中で整理できなかったから…



「……帰ろ」



このままじゃいけない気がする……

澪はゆっくりとした足取りで家の方に足を進めた



その頃闇の記憶の本部である自分の家に帰って来た



「おかえり悠」

「…………兄様は?」



帰って来てるよね…この時間だったら



「上にいるんじゃない?」

「いてくれると良いんだけど……」

「どうしたの?」



李絵がそう問うと悠は



「チョット喧嘩を売りに」



と言ってさっさと上に上がっていってしまった

バンッ

ノックもしないで悠は自分の兄である誠の部屋を開けた



「どうかしたのか…?」

「数ヶ月前…記憶を消した人って澪お姉ちゃんだよね?」

「ッ!!」

「その反応は…隠してたでしょ?兄さん」

「自分の部屋に行け」

「さっき、公園で澪お姉ちゃんに会った」

「…………」

「澪お姉ちゃんすごく悲しそうだったよ!」



ねぇ!

なんで?今回は澪お姉ちゃんだったの…?

悠はその続きを言えなかった



「悠、戻れ」



誠は悠と目線が合ったがすぐに逸した



「じゃあ、一つ聞かせて。何とも───」

「思ったさ!……だけど、沙姫に頼まれたからだよっ!」

「サキ姉ちゃんと澪お姉ちゃんどっちが大切なの…?」

「どっちも大切に決まってるだろ」



ガシャンッ!

その直後何かが落ちる音がした



「ねぇ?誠……どういう事…?」

「沙姫………」



やめてくれ…その続きを言うのを

俺はまだお前に知られたくないんだ



「アイツとどういう関係なの?」

「ッ!!」

「しらばっくれないでちゃんと答えてよ」

「……沙姫の隠してる事も言えば教えてあげるよ」



我ながら嫌な質問だと思う

理不尽かもしれないだけど、澪の事に関しては俺だけの事じゃないから……



「………アタシは、両親…特に父親に殺人鬼として小さい頃育てられた」



その後の話はだいぶ残酷に近かった

父親は沙姫に何度も人を殺させた

沙姫はそれを拒めば虐待をされた



「………アタシが最後に人を殺したのは約7年前…小2の時」

「え?」

「アタシは誠と悠の両親を殺したの!!」

「しかも、俺や悠、澪の前でな」



その言葉は沙姫に重くのし掛かった



「知ってたの…?」



知ってたんなら…なんで言わせたの?



「確信は無かったからね……今日は全員集まらないね…明日で良いかい?」

「……なんで?」

「これは僕や兄様だけの事じゃないんです」



だから…分かってくださいと呟いて悠は自分の部屋に行くためにこの部屋を出て行った

少しだけ涙ぐんでいた気がする




その頃澪も自分の家に戻っていた



「澪おかえり」

「ただいま………」

「なんか元気ないね」

「さっき、悠にあった」

「悠?」



夕維は疑問気味に澪に聞き返した



「九条悠……僕らと幼馴染みの」

「じゃあ、なんで浮かない顔してるの?」



何でって…それは……



……悠が僕の事を知ってた



えっ?

澪は今なんて言った?

記 憶 を 持 っ て る 人 が い た ?



「嘘でしょ?……なら誠さんが今回の記憶の犯人…?」

「夕維どういう事?」

「……探していたら、闇の記憶と言う組織を見つけたの」



夕維は拳を握り締め泣きそうな顔で澪と目を合わせた



「闇の記憶は澪の記憶を消した犯人…そのグループは全員記憶があるの!!」



詳しくは明日ね…と笑って夕維はこの部屋を出て行った



一体なにがでなにが本当なんだ?

僕はなにを信じたらいいんだ?


これは本当に真実なの?

あの人はこれを望んだの……?



なんで…はぐらかせてしまうの?

アタシは一体貴方にとってなに?



全く…何て俺は馬鹿なんだ───

だれがこんなコトして喜んだんだ…?



僕は知ってしまったあの日の真実を…

僕はこの後あの人にどう接して行けばいいのかな……?





☆あとがき☆