き誇る闇の花


あーヤダヤダ僕が怪我をしてからみんなの目が変わった。

尊敬っていうか…哀れっていうか……まぁそんな感じ

でも、夕維は絶対そんな目をしない。僕の味方だから



「おぃ!岡崎……結城先生が呼んでるぜ!何かしたのか?」



そうそう、あの日以来翔兄こと結城先生によく呼ばれる。血のことを教えて欲しいらしいけど僕は絶対に言わない
言っても信じてくれないから………





「何ですか?結城先生」

「今日こそは教えてもらうぞ岡崎」

「………嫌です。」

「成績がどうなってもいいのか?」

職権乱用ですよ」

「そんなの関係ないさ」

「……じゃあ、ヒントならいいですよ」

「よし、そのまま答えを言え」



あー気を付けないと仮面が外れる……全く、誰がそんなキャラにしたんだよ……って自分だよね
そう、こんな事になったのも全部自分の責任―――



「………まず、そのことは、貴方の記憶にあります」

「ないから聞いてんだけど…」

「じゃあ、これは信じるか信じないかは勝手です……その記憶は絶対にあります」

「はぁ?どういう―――」

「澪っ!まだここいたの?」



丁度よく、夕維が僕を見付けてくれた。

軽く夕維が焦っているようにみえるのは気のせいだろうか……?



「じゃあ、先生さようなら」

「ちょっと待てっまだ話は───」



終わって無いと言う前に2人は結城先生の前から消えていた

意味わかんねぇ…俺の記憶だと……?と頭を抱えるようにして呟いていたのは誰も知らない



「全く…少しは警戒しなさい!ヒント与えるなんて事もうやめてよ」

「───盗み聞き」

「偶然聞こえただけよ」

「どうだか」



澪はは呆れた声で呟いたが…夕維には、聞こえてたみたいで少しムスッとした。

もちろん夕維は始めから澪と結城先生の会話を聞いていた。ヒントを与えたからびっくりして助け船に、はいったみたいだが……



「で、何か分かったの?」

「いいや、何にも」

「全く…一つ分かったことがあるの」

「マジ!?」

「うん…それは──」

「夕維ちゃん、聞いて!」



ふと、話を遮られた。…今の話聞かれてないよね?
最近、やたら周りに敏感に反応するようになってきた
これも、全て犯人の仕業なのかな?



「藤岡さん…なぁに?」

「えっと………あら?岡崎さんいたの」

「ヒドいよ沙姫」

「そうだ!岡崎さん、九条誠って知ってる?又は悠」

「なんで?」



澪は少しトーンが下がっていた



「いやね……知らないんだったらいいんだ!じゃあね二人とも」



嵐が去るように沙姫は去って行った
結局、当初の目的であった夕維には何も聞かずに…



「夕維……なんでアイツ誠兄のこと知ってんだ?」

「さぁ?」



誠兄は僕が小4のとき両親を亡くし、僕の目の前から消えた…それから一切連絡は無い………もちろん夕維にも
じゃあ、なんであの子は知っていたんだ?
しかも、まるで誠兄が僕との記憶があるかのように……



「もしかしてさ…」

「澪、取りあえず今のことは考えないでおこうよ」

「あぁ、そうだね」



それでも、澪は沙姫が言った言葉が気になるのか、しばらく考え込んでた

てか、さっきの分かった事って何?






「なんで?アイツは知らないの?」



家に戻った沙姫は先ほどの会話を思い出しながらぶつぶつとソファーで呟いていた



「何考え込んでるんだい?」

「ま、誠……何でもない!」

「俺に隠し事はできないよ。沙姫」

「じゃあ!聞くけど誠とあの岡崎澪の関係は何なの!」

「………お前には関係ない!」

「…何よ!アタシがそれで悩んでるのに」

「じゃあ、なぜそれを聞きたがるんだい?」

「それは………」



沙姫は聞きたい理由を問われると口を閉じてしまった

誠は仕方が無くなのか溜息を吐いて沙姫をみた



「……取りあえず今は、教えられない。」

「なんで!」

「…………」



誠はこれ以上何も言わず自分の部屋へと消えて行った



「なんで…なんでよ……」

「誠は沙姫に言いたくない事があるんだ──それを無理やり言わすな」

「うるさいな!」

「沙姫…これだけは覚えておけ、オレや誠いや…みんな誰にも言いたくない事だってあるんだ…沙姫だってあるだろ?」



沙姫は光希言われ、目を閉じて自分の過去を振り返った

そこに写るのは沢山の死体……その死体の中心にいる返り血塗れの少女その少女の手には血がいっぱい付いたナイフ



「泣くなよ…オレが誠に怒られるだろ」

「うん…ごめんね。……アタシも人に知られたくないことがあるよ…例え誠でもね」

「分かればいいんだ。ちゃんと目冷やせよ」



光希は沙姫の頭を撫で奥に進んで行った

子供扱いしないでよ!と沙姫は呟いたが誰にも聞えなかった







この日夢をみた───

とても残酷な夢

人が一人の女の子に殺される夢



「来るな、来るな、『化け物』」

「サキは……サキは『化け物』なんかじゃない!」



サキ?………アイツなのか?



「沙姫…さぁもっと殺れ」

「止めろ、止めろ!!止めてぇぇぇー」



え?………誠兄?嘘でしょ!!悠もいる

なにこの夢は…

グサッ

えっ?



「イヤァァァァァァァー」





「ッ!!………なんだったんだ。あの夢は」



外はまだ日が昇って無く真っ暗だった。

久々に一人が怖くなった…

記憶を消されてからそんな事は無かったはずなのに───

それに、サキって──まさかあの沙姫じゃ無いよね

色々な考えを打ち消して澪は布団の中に潜り込んだ





一方別の場所でも同じ夢をみて起きた人がいた



「沙姫?」



うっすらと呟かれた名前は誰の耳にもはいらなかった…



「あれは……両親の死んだ時の記憶───じゃあ、やっぱり」



それでも、誠は確信がないから違うだろと思い首を横に振り目をつぶった。






アタシが誠に隠してる秘密

それは───

アタシは殺人鬼だった事

父親に殺人鬼にされた事

そして──誠の両親を殺した事

言えるわけが無い………言いたくも無い…


でも……バレた時どうすればいいの?






「夕維……今日変な夢みた」

「どんな?」

「誠兄の両親が、サキって子に殺されるところ」

「なんか変っていうよりも嫌な夢ね」

「夕維!!そんな事じゃなくて!もしかしたら藤岡沙姫かも知れないんだよ」

「なんで?」

「頭回ってる?」

「眠い……」

「頑張れ…昨日の話思い出してみて」



昨日…?

澪が結城先生に絡まれて……私が助けて……………



「あっ!!あの時」

「わかった?」

「私の話が藤岡さんに邪魔された時だ!」

「正解」

「………でも、確信は無いよね」

「そうだね。でも、違うとも思えない」



澪は窓越しに空を見上げ溜息を吐いた

今日の空は快晴…今の僕たちの心とは正反対

僕はこの空が嫌いだった。雲一つなくて自分が独りぼっちになったんだと感じる

例え夕維がいたとしてもね…………

早く見付けなくちゃ───僕をこんな苦痛に合わせた人物を




なんで、澪の記憶が消えたんだろ?

なんで、澪だったんだろ?

なんで?

私 じ ゃ な か っ た の ?

もっと調べなくちゃ

噂で聞いた『闇の記憶』という組織を…………




なんで、俺は澪を傷つけたんだ?

なんで、俺は気付かなかったんだ?

───澪が傷つく事を……

なんで、俺は………

沙姫の言葉に何も思わなかったんだろう

俺は愚かだな




なんで、誠は私じゃなくて岡崎 澪を見てるの?

なんで、私じゃないの?

なんで、教えてくれないの?

誰にも知られたくない秘密は一体なんなの?

こ の 感 情 は 何 ?






☆あとがき☆
真実はすぐ近くに眠ってる
後は、アナタが気づくのを待つだけだ
誠は何故、その事を隠したがるのか…