任務は滞りなく終えることができた。三人とも大なり小なり怪我はあれど、これぐらいはいつもと変わらないだろう。というより三人でやったからか、だいぶ時間は短縮できただろう。とは言え譜術などを大量にぶっ放していたので疲労度がヤバイのは言わずもがなかもしれない


「さぁ帰るぞー」
「あぁ」
「みんなこんな任務やってるの……きつ」
「まぁな。導師守護役は護衛が主だからこういうのに駆り出されないのか」
「そうだねーエベノス様のお供が多かったよ。後は……ううん。お話相手もしたかなぁ」
「ふーん。新しい導師にイオンが即位したっていうのにお前は異動なんだな。普通は残りそうなのに」
「え。……ほら全員残留ってわけじゃないからさ」


とフィン以上に疲労度が高いが漏らした一言に、二人は部隊の違いを改めて感じていた。そもそも、導師守護役は女性だけで組まれた部隊だから、当たり前といえば当たり前か……。戦闘重視と言うよりも、守護重視なんだろうから。士官学校で同じ教養を受けて来たとしても、所属する部隊でこんなにも違うとは……面白いな
導師エベノスの死後、部隊編成が組み直されたらしい。そういえば、前にヴァンが言ってたな。面白い奴が入ったから導師守護役にしようとしているって……。何故オレに話したかは知らないけど。てか、あいつに人事権なんてあるのか?
の含みのある言い方には特に指摘もせず、スルーする。人には聞かれたくないことの一つや二つ持ってるもんだからな


「あぁ、そうだ。しばらくは俺の部隊にいてもらうぞ」
「フィンの部隊に?」
「オレは殆ど本部にいないからな。仕事を覚えるならフィンの部隊が安心だろう」
「なにそれ。いないってどういうこと?」
は別件で飛び回ってるんだ。部隊だって持つもの渋ったぐらいだから」
「いねぇっていうのに持たす方が悪い。メンバー知らねぇし」


そう、昇進人事の内容を知ったのは今日なのだ。部下なんて知るはずない。オレは一人でいいのにと眉をひそめるも、実績があるんだからしょうがないと二人は言う。実績って言ったって、ただ単に前の任務で一気に敵を蹴散らしたからだろ……。それで二つ名が付いただけだっていうのに。嬉しくも何ともない。迷惑なだけだ。俺にとっても部下にとっても
ま、早く帰ろうぜと促せば私語をやめ、スタスタと歩き続ける。ホーリーボトルを用意したおかげで、帰りの戦闘は最低限で済んだ
師団長の自室に足を運べば、山積みの書類に手をかけている姿が。あんなになる前に早くやればいいのに……といつも思うが、彼はそういう性格だ。締め切りまで遊び呆ける


「おー!お帰り。怪我はなさそうだな……フィン。うちの部隊の書類の書き方をに教えてやれ」
「わかりました。じゃあ俺の部屋で」
「で、。ヴァンが呼んでたぞ。任務でいないっていったら戻り次第部屋に来いってさ。お前何やらかしたんだ」
「はあ?……ま、いいやヴァンの所に行けば分かんだろ。荷物置いてから行きます」
「そうしてくれ。急ぎじゃないようだったがな」


アットホームがモットーのこの師団は結構ゆるい。“特務”と言うだけあって他の師団で回しきれなかった案件や極秘扱いの内容のものが回ってきたりする。それ故閑散と繁忙の差が激しい。師団の人数も50人程度で決して多くはない。一応上司には敬語だが、言葉は軽い。他の師団では考えられないだろう。尤も、皆場所と場合を選んで言葉を使い分けているからか、問題視されることはない

三人で部屋に向かい、は不要な荷物を執務を行う机に投げ置き、は二人部屋が新鮮なのか辺りを見回している。フィンはそんなに声をかけ、椅子に座らせ書類を手渡した。オレのものには手触れるなよーと釘を刺しては部屋を出て入った


「さて、ヴァンの部屋はーっと」
「帰ったか
「只今。御用とお伺いしましたが?」
「あぁ、丁度いい。着いて来てくれ」


広く似たり寄ったりな道が多い神託の盾本部。最初こそ迷っていたが、数年もここにいれば流石に慣れるので、ヴァンの部屋に向かって歩く。時折すれ違う教団員に挨拶をしていれば、曲がり角でヴァンにバッタリ出会う。その場で用件を言われると思ったが、そうでもないらしい。じゃあ、ヴァンの部屋かと思ったが、それも違うらしい。どんどん人気のない地下に降りて行く
ある程度階を降りた頃だろうか、ヴァンは一つの部屋の前に立ち止まった


。確認だが、お前は預言のことをどう思っている」
「呼び方。“いま”のオレはだ。……まぁオレは預言なんて道標の一つでしかないと思っているけど?それ通りに動く必要なんてないし、それ通りに動くとは思えない。特に人の死は詠めても伝えないだろ」
「その思考は変わってないのだな。それを聞いて安心した」
「あっそ……。知ってんだろ、オレが預言嫌ってる事ぐらい。同郷なんだからよ」
「私はその預言を壊そうとしている。もちろん付いて来るよな」


疑問符すらないその言葉。ヴァンが“私”を見つけ出した時から、付いて行く事はヴァンにとっては決定事項らしい。さぁ?と首を傾げてみるものの、その答えはスルーされた
ヴァンは目の間にある扉を押し開け、中に入っていった。もそれに続くが、ソファで蹲って寝ている少年が目に入り思わず歩みを止める。しかし、ヴァンがそれを許さなかった。扉が閉められないと静かな声で威圧がかかる。その声で我に帰ったは、慌てて扉を閉めた
ソファで寝ている赤毛の少年。それは正しく、捜していたルーク・フォン・ファブレだった


「さて、。フォミクリー、レプリカ──この言葉に聞き覚えは?」
「……バルフォア博士が行ってた実験だろ。フォミクリー技術でレプリカを作る」
「そして、レプリカの誕生は預言には詠まれていない。私はこれを使って“預言”の存在を消そうとしている」
「で、オレにはルークがここにいる理由が分からないんだけど?」
「こいつはルークではない。アッシュだ。ルークはきっと今頃公爵家だろう。まぁルークといっても同位体のレプリカだが」
「待て、じゃあお前がルークを誘拐したと?……で、フォミクリーを用いてレプリカを作り、レプリカをファブレ家に返したと言うのか?」


数日前にファブレ家を騒がした誘拐事件の犯人がヴァンだと……?王家の血筋の者を誘拐してまでやりたいことはなんなんだ。ホドにいた時代にあった譜石……あれが何か関係があるのか?いや、でもあの内容をオレは知らない。関係する血筋であるのは確かだが、まだ教えてもらえる年齢じゃなかった
……ヴァンはあの内容を知ってる可能性があるんだな


「あぁ、これも預言を崩すためだ」
「狂ってる……他にも方法があるだろうに」
「私はこれしか方法がないと思っている。……にはアッシュの世話を頼みたい」
「……毎日は来れないぞ」
「分かっている。たまにでいい」


部屋に戻るというヴァン。聞きたいこともあったが、確認することはできないようだ
扉の前から数歩ズレてヴァンを通してやれば、すれ違いざまに耳打ち。はその言葉に思考が停止するが、ヴァンは気付かないふりをして、この部屋から出て行った
“これを知ったお前も同罪だ。逃げられると思うな”
ヴァンの計画にの参加は強制であると改めて思い知らされた瞬間だった
はは……っと乾いた笑いがから漏れる。顔を押さえてズルリと壁伝いに崩れ落ち、は思考を再開する
このままヴァンのいいなりになるのは癪に触るし、するべきではないと勘が言ってる。考えろ考えろ……ヴァンに気付かれず、綻びを作らなくては。詳細は知らないが、あんな計画起こすべきじゃない。計画を無にすることは無理でも、方向性を変えなくては
思考を巡らせていれば、ソファで寝ていた“ルーク”がモゾモゾと動いた。もうすぐ起きるらしい。冷静じゃない頭で考えてもしょうがないと、考えに耽るのをやめ、ソファに向かう。ソファの上で蹲っていた“ルーク”はゆっくりと目を開け、グの瞳を輝かせた


「……?」
「おはよう。なぁ、一つ聞いていいか?」
「あ、あぁ……答えられる範囲なら」
「君がここに来た理由。ゆっくりでいい、時間はたっぷりあるからな」
「!!……俺、ヴァンにずっとシェリダンでの調査が嫌だって言ってたんだ。そしたら、ヴァンが……」
「そうか……両親に逢いたいか?」
「……逢いたいっ!」


滅多に“ルーク”から流れることのない涙が瞳から零れ落ちる。それにギョッとするが、当たり前か……と自己完結し、昔よく親がやってくれたように、優しく包み込み背中をさすってやる。時々漏れる嗚咽を聞かなかったことにして、“ルーク”が落ち着くまでそのままの体制でいた
レプリカを見たことない自分が言うのもなんだが、レプリカと被験者の見分けがつく気がする──確かレプリカは第七音素を用いて生成されてたはずだ
普通の人間とレプリカ──生まれ方が違う故、生体にも何か違いがあるんじゃないか?もしかしたら“ルーク”はルークに戻れないけど、“ルーク”の心は癒せるかもしれない
“ルーク”が落ち着いた頃を見計らって、は“ルーク”に一つの可能性を伝える


「“ルーク”。オレは公爵にルーク探索の任を影で受けている。ただ、ヴァンが目を光らせているからお前がルークに戻ることは難しいだろう」
「……うん」
「ここからは、オレの憶測だから間違ってるかもしれねぇけど……公爵は気付かなくても夫人は気付かれるかもしれない。影武者であると。これはどう言う意味だかわかるか?」
「なぜ母上は気付くと……?」
「自分の腹から産み落とした子を間違える親なんて、よっぽどのことがない限りあり得ないだろ。さぁ“ルーク”、手紙を書いてくれ」


紙とペンは幸いにもこの部屋に置かれていたので、椅子に座らせ、手紙を書かせる。内容はたわいもない話。そこには誘拐犯の名前やシェリダンでのことは一切なし。下手をすればオレ自身が誘拐犯と間違えられるかもしれないが、こそはしっかりと理解してもらうしかないし、シュザンヌ様がレプリカのルークが替え玉だと気づかなければ、この手紙は渡らない。一か八かの勝負という訳だ
そもそもオレは、神託の盾にいるからキムラスカに堂々と足を運べる人間であって、マルクトにいたら王都であるバチカルになんて足を運ばないだろう
──結局復讐心は摘み取られたが、嫌いなものは嫌いなのだ。好きになったとしても憚られる
思い思いに手紙をかけたのだろう。ペンを置いて手紙を読み直している


「書けたか」
「……あぁ」
「手紙を書いた痕跡ともらった痕跡どちらも残すなよ。ヴァンにバレたら大変だから」
「……が持っててくれって言ったら持っててくれるか?」
「オレが?……一人部屋じゃねぇからな。保留とさせてくれ」


同室が心配するから戻るわ。と“ルーク”……アッシュから手紙を受け取り、そのままの流れで頭を撫でれば、少し驚いた顔をしつつも照れ笑い。その顔に安心して部屋を出る
誰にも気づかれないようにと、アッシュからもらった手紙を服に隠し来た道を戻る
知らぬ間にすっかり時間が経っていたようだ。すれ違う教団員はどこか疲れている様子。時計を確認することはできなかったので詳しい時間は知らないが、夜なのだろう
部屋に戻れば、そこにはフィンしかいなかった


「遅かったな」
「あー他の用事も頼まれてな。ずっとそこにいたんだ……任務帰りで疲れてるっていうのに」
「災難だったな。そうだ、折角女性が入って来たんだから言っちゃえば?」
「はぁ?本来ならお前にだって教えるつもりなかったんだから、言うわけねぇだろ」
「いや、だからってな……まだ身体つきでバレることは少ないだろうけど、いずれはバレるぞ」
「そこは腕の見せ所だろ……って冗談は兎も角、その時はその時。無駄に増やす必要はない」


ほら、飯食いっぱぐれるぞ。とフィンに声をかければ呆れた顔をしたフィンと目が合う。とりあえず机の引き出しに預かった手紙を押し込め、フィンと共に食堂へと向かった

それから数日経ったある日、ルークが見つかったという手紙をガイから貰い、握り潰してしまったのはここだけの話に留めておこう
アッシュの世話と神託の盾での任務。いつもと違う日々を過ごしているからか、あっという間に日にちが過ぎていく。自分が持つ部隊の人間とも顔合わせが完了し(とはいっても、全員見知った顔だった)、毎日報告と指示に追われていた。もちろん、自分で赴く任務も多いので部屋を開けることも多い。明日からも、ここには暫くいなくなる。いなくなる間のオレの部隊は師団長に指示を仰いでもらうことになってる──トップ、オレじゃなくていいじゃん
アッシュから受け取った手紙を大事に抱え、軽い手荷物を持って部屋を出る
今日はたまたまフィンが任務で朝から出ている。師団長に声をかけるために、師団長の部屋の扉をノックした


「師団長。です」
「おー。はいれはいれ」
「失礼します。出かけるのでご挨拶に……?」
「あ、おはよう!」


中に入れば、執務机に向かう師団長とソファで書類を仕分けているがいた。女好きと悪名高い師団長の事だ。見かけたから声をかけたのだろう。オレのことは男だと思っているからは、そんなに声がかからない──気づいているかもしれないが


「あー手伝いをしてもらってるんだわ」
「相変わらずのご様子で……、セクハラされたら殴って逃げろよな」
「そんなことしないさ。あぁ、戻ってきたらでいいから一つお願いを頼まれてくれ」
「……了解。忘れてたら突っついてくれ」
「そのつもりだ。いってらっしゃい」
「いってきます」


手を振って部屋を出る。さぁ、行くかと、ダアト港へと足を進めた



***



目の前にはファブレ家。以前も静かだったが、更に静けさが増している気がする
気が重いと深く呼吸して気を落ち着かせ、門を潜る
相変わらず、ガルディオスの宝剣が出迎えてくれる。元々の持ち主を知っている所為か、その思いは複雑だ
そのまま、執務室に向かう。途中すれ違う、メイドや執事に挨拶をしていれば長い道もあっという間だ。執務室の扉をノックすれば、一瞬の間の後入室の許可がでた


「只今戻りました」
「あぁご苦労……報告は聞いたか?」
「はい。ガイより手紙を受け取りました。俺はルーク様のお世話をすればよろしいですか?」
「そうだな……時期が来たら剣の相手にもなってやれ」
「かしこまりました。……シュザンヌ様のご容態は?」
「ルークが見つかったからな。だいぶ良くなっている」
「後ほどご挨拶に……」
「そうしてやれ」


ルークの部屋にも行ってやれ。と前と変わらぬ声のトーンで伝える公爵。それに返事をして部屋を後にする。記憶も何もなくなってしまったルークに対し、どう接すればいいかわからないのだろう
実際は記憶をなくしたわけじゃなく、記憶がないのだが。でもそれを知る人物は俺とヴァンのみ……
では。と挨拶をして執務室を後にする。向かう先はその奥のシュザンヌ様の寝室だ
執務室と同じくノックをすれば、程なくしてメイドが扉を開けた。邪魔だったかと思ったが、そんなこともないらしい、が入ると同時に部屋から出て行った


「只今戻りました」
「お帰りなさい。
「ルーク様のご帰還なによりでございます」
「そうね……。はルークと会ったかしら?」
「いえ、グリムゾン様とシュザンヌ様にご挨拶してからと思っておりましたので」
「そう……」


ベットに座り、こちらに向ける表情は何処か苦しそう。顔色は普段よりは少し青白い気がする。体調が悪いのならまた来ようと思うが、今を逃したら機会がないようにも思えた
胸元に隠し入れてる白い封筒の所在を確かめ、一度大きく深呼吸。気合を入れて内緒話をするように、ベットに近づき両膝をついた


「ガイから手紙で現状を聞きました。全ての記憶がないと。歩き方すら忘れてしまったと」
「……えぇ」
「シュザンヌ様は戻ってきた“ルーク”様をどう思いますか?」
「どういうことかしら」
「私にはどうも、違和感があるのです。ですので実際ご覧になられたシュザンヌ様のご意見をと思いまして……ルークをご自身でお産みになった貴女様の」


賭けだった。自分の意見を出してしまうことで思いも寄らぬ結果になってしまったら、この計画はおじゃんだ。自分の思いと少しの嘘を織り交ぜたこの言葉。最後まで聞いたシュザンヌ様は目を見開いていた。その表情に少し安堵したが、まだ気が抜けない。シュザンヌ様は少し考える動作をしたあと、ゆっくりと口を開いた


「……自分の子であるという真実と同時に私自身で産み落とした子に感じないのは事実。しかし、きっと全ての記憶が欠落したあの子を見たからだと思っておりましたが……それは違うのですね」
「申し訳ございません。ここからはグリムゾン様にはご内密に」
「……あの人はルークをルークと疑ってませんもの仕方ないわ。長いお話になるのなら、もお座りになって」
「ありがとうございます」


両膝なんて滅多につかないので、痺れてきていたのをシュザンヌ様に見破られたようだ。お言葉に甘え、近くに置かれた椅子に腰をかければ、僅かながらにシュザンヌ様の表情が強張った。聞くのが辛いのかもしれない


「ガイから手紙を貰った後のことです。ダアトにて赤毛の子供を見かけました。王家でなくても赤毛はいるかと思いましたが、その赤は私にとって見慣れた赤でした──」


周りに誰もいないことを確認し、彼に声をかけました。……えぇ、ご想像通りルーク様でした。私はルーク様にお話をお伺いしました。聞けば自由にはできるが、家には帰れないと。家に帰っても同じ顔をした別の人間がいる。そう言っておりました。自分の置かれた状況を全て知っているようでした。

ほんの少しの嘘を織り交ぜた話にハッとするシュザンヌ様。方法はどうであれ、ここにいるルークは影の人間でダアトにいるアッシュこそ、本物のルークであると理解してくれたのだろう。手はわずながらに震え、目を瞑り思考を巡らせている
どれぐらいの時間だっただろうか。でも、言うほど長くはない。シュザンヌ様が次に目を開いた時には迷いは全て消え去っていた


「ルークは生きているのですね」
「……信じていただけるのですね」
「信憑性が高いですから。それに、貴方は同じ存在が二人いることの原因を知っているのでしょう?」
「あくまで仮説でございますが……お聞きになりますか?」


仮説──この言葉も真実ではない。ここにいるルークはレプリカのは事実であるが、なぜルークだったかは知らない
シュザンヌ様にフォミクリーのレプリカである事と預言が関係している仮説を述べれば、ご納得いただけたようだ


「そう……預言が関係しているかもしれないのね」
「私はそう考えます」
「会えないのは残念だけど預言ならしょうがないわね」
「……お会いになることは難しいかもしれませんがな、彼から手紙を預かりました。お読みになりますか?」


俺が一言預言と言えば、全てが受け入れられる。腐りきってるとしか考えられない。今回ばかりはそれを否定することなく、頷くシュザンヌ様に手紙を差し出し、返事をいただければ会ったタイミングで渡すと伝え、部屋を出る
これ以上いてもボロが出そうだ。預言を信じるこの国と嘘を固めた自分に……いや、嘘で固めてるなんて今更か。“”と言う存在自体がもう、嘘なのだから……
思考を切るためルークの顔を見ようと、ルークの部屋へと足を運んだ──







後書き
次は数年後に飛びます。
本編開始まで6話程度を考えてます