き誇る闇の花


―――――――アンタなんか…いらないのよ!!

な…んで?

―――――――邪魔なのよ

僕が邪魔なハズがない…

―――――――私ね…澪のコト大っっっ嫌い!!

ゆ…い?嘘でしょ?

―――――――ねぇ、言ったでしょ、アンタに居場所なんかないって

ジャア、僕ノ居場所ハ何処ナノ?

―――――――さぁね。アタシは知らないわ。自分じゃないもの

僕ハ要ラナイノ?

―――――――そう要らないの。

嘘ダ嘘ダ嘘ダァァァー

―――――――そうやって足掻けば良いさ

ヤダ助ケテ…嫌ダ…

―――――――じゃあね、哀れな澪ちゃん

ヤァァァァァァー






「…………ゆめ?…でもソレにしたらリアル過ぎる…………怖い」


汗はビッショリかいてるし……つかまれた感覚が残ってるってどういうコト?

澪は起き上がり、水を飲むためにリビングに向った。
しかしソレが思いも寄らぬことになろうとは誰が予想してただろうか…

……………ごめん自己紹介がまだだったね。

僕は岡崎澪、花崎中学に通う2年生
えっ?家族構成?
えっとね…先ずはお父さんにお母さんそれに姉が2人の5人家族
部活は美術部で、友達は結構入る方かな…
まぁ、自己紹介もこれぐらいでいっか、お母さんも待ってるだろうし

澪は階段を下って行く


「お母さん、おは…いない?」


なんで?いつもこの時間にはいつも起きてるハズなのに

その時、ふと頭に過ぎったのは、さっきの夢で言われた言葉…
『アンタなんか…いらないのよ!!』…って言うヤツ

まさか…ホントに僕はみんなの邪魔者だったってこと?

いつもと変わらないリビングの机の上にA4サイズの封筒が置いてあった。
澪はゆっくりとした足取りで机まで歩いていき封筒を手に取った。


「うそ…でしょ……」


正…夢?本当に…お母さんたちは………?

澪が手に取った封筒に入っていたものは……通帳に、家のカギ、保険証、そして…パソコンで作られた手紙だった。

保険証には、家族の名前がなく、自分の名前のみ、通帳は有り得ない額が入っていて余計、澪を混乱させた。

澪は封筒に入っていた手紙を取り出し、読み始めた。


『これが夢だと思ってるかもしれないけど、夢ではなく現実だから。
アンタは1人、ずっと、ずっとね。
あぁそうだ、そのお金はアンタのだから。
これから1人で生きて行くのに必要でしょ?
まぁ、頑張りなさいな
                            S.F』


うそでしょ………1人…?

―――――――そう、1人

1人は嫌だ…

―――――――それでも1人

嫌だ…嫌だ…1人は…嫌いだ……

―――――――なら足掻きなさい。どうなるか分からないケド





当初の目的を忘れてリビングの床に座って何分経っただろうか…

澪はゆっくりと制服に着替え、家を出た。勿論学校に行くためだ。
ホントは行きたくは無いんだけど…

玄関を出て、家をみる。内面が変わってないからお母さんたちが出て行ったかと思ったけど違った。
……自分が隣りの家に移ったんだ。
――――もしかして、隣の家で僕を捜してるからも知れない…なんていう希望を持って学校への道を歩いて行く。

周りを見れば、同じ制服を着た、男女が仲良く歩いてた…先輩だ。

そう、美術部の先輩…僕の事は覚えてるだろうか……でも、覚えていて欲しいが無理だろぅ、新しい家まで用意するぐらいだ。

そう簡単に記憶は戻らないと思う…戻るかどうかも微妙だが……。

澪はそのまま学校の前の坂を降り正門を抜けた。




「…どうしよう」


そう思ったのは昇降口、自分の下駄箱に入れていいのか分からない…。

だけど入れて良いみたいだ…自分の上履きがそこに置いてある

澪は靴を入れ、ゆっくりと職員室に向かって行った。

若干うるさい廊下で扉をコンコンと静かに叩く。
周りはうるさいはずなのに、たたいた音はやけにはっきり聞こえた。


「失礼します。……岡崎澪です。」


その名前で?が浮かんだ先生がいたが見て見ぬ振り。
そんな事を考えてると澪がよく知る1人の男が澪のいる扉に向かう


「君が岡崎澪さんだね」

「…はい」

「俺は3組担任の吉田だ。教室は分かるか?」


澪は軽く頷いたが、吉田は気付かなかったのか気付かない振りをしたのか分からないけど、
俺と一緒に行こうと言って澪を職員室の中に入れた

やっぱり皆僕の事を覚えてない…吉田Tだってあんな印象よくしたのに…

先生の会議が終わり、吉田が澪に行こうかと声をかけるまで澪のマイナス思考の考えは終わらなかった…

吉田は3組の教室に入り、転入生の説明をした後に澪を招き入れた


「岡崎澪です。…まだ引っ越して間もないので分からない事が多いと思うのでいろいろ教えて下さい」


などと言った嘘を並べ、澪は軽く頭を下げニコッと微笑んだ。
その笑顔に顔を紅く染めた男子は数知れず…


「…じゃあ、岡崎は渡辺の隣りだな。渡辺教えてやれ」

「……岡崎…此所だ」


渡辺は少し嬉しそうな顔をして、澪を呼んだ
それをみた他の男子は少し羨ましいそうな顔をしたのはまた別の話

―――凄く違和感がある…だって、昨日まで自分がいた場所な筈なのに元々自分がいなかったみたいに“時”が過ぎていく………


「俺、渡辺結斗ゆいと…チッと女のっぽい名前だけど気にすんな!ヨロシク」

「こちらこそヨロシク………なんて呼べばいい?」

「えっ?…普通に渡辺でいいよ。皆そう呼んでるし」

「わかった。じゃあ、渡辺君って呼ばせてもう」

「君なんて、いらない…呼び捨てにして」

「分かった」


先生の話なんてあまり聞かず、ただ渡辺との会話を楽しんでいた。
先生の口から思いも寄らぬ言葉を聞くまではね…………でもホントは楽しいって思ってたのか微妙だけど…


「…………じゃあ、岡崎が教室の場所を覚えるまで、誰かに道案内を頼むが…やりたい奴」


僕に道案内は…必要ない。だって、昨日までここで優等生をやってたんだ―――僕の幼馴染みの夕維と2人で………


「………………なんだ、誰も手を上げないのか…じゃあ、藤岡お前に頼むが大丈夫か?」

「…はい、分かりました」


藤岡と言われた女子は少しも嫌な顔をせず了解をした。
澪がそれに違和感を感じたのは言うまでも無い

……藤岡ってことは…藤岡沙姫か
―――あんまり喋った記憶はないけど明るい子だった気がする…まぁホントにそうかは知らないけど…知る必要もないし

この藤岡沙姫が今回の事件の重要人物だと知るのはまだだいぶ先の事


「初めまして岡崎さんアタシは藤岡沙姫…沙姫って呼んで…(ホントはやだけど)」

「初めまして…じゃあ、沙姫って呼ばせてもらうね…私の事は何でも良いや、好きに呼んで」


心が読めない澪は沙姫が心の中に言った言葉が聞こえず笑顔で答えた


「……うーんじゃあ、アタシはそのまま岡崎さんって呼ばせてもらうね。」

「いいよ……次の時間って何?」

「確か…数学。先生は結城先生」

「へぇー」


普通そこでどんな先生?って聞くのが当たり前だろうが僕には必要無かった。
聞きたくも無い…僕の従兄妹の話なんて―――


「(フフフ…いい気味。独りって可哀相だねぇ。まぁアタシには関係ないけど)」

「授業始めるぞ……」


結城…先生の言葉を聞くまで少しボーっとしていた気がする


「…………先は答合わせてからだ…P.75の問い1の(1)から――――」


数学もまたいつもと変わらず過ぎて行く僕の存在が優等生から転入生に変わったっていうのに――


「……オィ、お…き……オィ、岡崎、聞いてるのか?」

「えっ?…ごめん。考え事してたから聞いてなかったかも…」

「はぁ…岡崎って結構考え事すると何も聞こえないタイプ?」

「…うん。そうだね…忘れてた………で、何するの?」


少ししょぼくれてゴメンって返せば相手は悪いことをしたかの様に顔を少し赤くして答えてくれた。


「ここの問題解けって」

「ありがとう」

「今度から気をつけろよ」

「うん」


カリカリカリ……ただシャーペンを動かす音しかしない
それだけ数学の先生は怖いのだ…見た目だけなのだが…

数分後に先生が答え合わせするまでその静けさは消えなかった


「じゃあ、ここまで」

「起立、礼」

「ありがとう御座いました」


やっと1時間目の終わり…僕はみんなの質問責めにあう前に沙姫に教室の場所教えてって行って教室を出た

そんなみんなの視線は沙姫を見ていた
だけど視線を気にせず沙姫は(いやいやながらも)澪の手を引張って行った


「トイレは真ん前で……あら?夕維ちゃんじゃない


沙姫が言った一言で澪の目は揺らいだ


「あら。藤岡さん……その子は誰?」


ここは澪の心を崩しておくか…

なんて沙姫が考えてたなんて誰も知らない


「この子は、転入生の岡崎澪さん。アタシが道案内役なんだ」

「……岡崎澪です。貴方は?」

「ユイは…仲本夕維。4組の学級委員やってるの」

「仲本さんね」

「ううん、夕維って呼んで!」


軽く握手をし夕維は他の子と階段を登ろうとしていた。
――急に声がかけたくなった、昨日の様に…いつもの様に


「…………夕維」

「なぁに?」

「……ごめん…何でもない」

「そぉ?ならいいや、またね」

「…やっぱりチョット待って」

「ん?」

「今日の昼休み…秘っ……二人だけでお話がしたいの付き合ってくれる……?」


いつもの様に柔らかな笑顔で夕維に問い掛ける
夕維は少し驚いて、目を見開くが何かに気付いたらしく頷いた
3組に行くから…と伝えて



その後の時間なんて簡単に過ぎて行く……
自分が転校生って言うこと以外は………
何故こんなことになったんだろう…その問題の答えは誰がもっているのだろう?

澪の不安が心を壊す

―――僕ハ独リナノカ…
独リボッチデ生キテ行クノ…?



この問いもまた答えてくれる人は誰もいない





☆あとがき☆
この事実は、あまりに儚く憎いモノだった
これから、徐々にUPしていきます