き誇る闇の花


昼休み。僕は夕維と一緒に図書室にいた

本当の事実を教えるために…

助けてもらうために……


「…で、お話ってなに?」

「ねぇその前に…今付けてる仮面外さない?」


澪が言った言葉に夕維は目を見開いた。その目は少し怯えている様にも見えた

やっぱり…夕維も覚えてないか……独りぼっちが僕の役目みたいだけど、そうはしないさ。

僕は計画者の人形じゃないからね!


「―っ!!…なんで分かったの?」

「僕は夕維の事を知ってる」

「…なんで?」

「その理由は夕維たちから消えた僕に関する記憶にある」


澪は表情を無くし無表情で、夕維に対して答えを言う


「私たちから消えた記憶?……そんなの知らない!!」

「知らなくていい、今からちゃんと話すから…」


夕維の怒った声を聞いて澪は無表情を崩してしまった。

夕維の怒った所は見たくない……お願いだからそんな顔しないで…もうあの時の思いはしたくないから…


「…僕は夕維と幼馴染みなんだ。だから、夕維がどうして仮面を付けてるのも知ってる」

「―っ!!…でも、岡崎澪なんて知らない」


有り得ないって言いたかった。だけど、言えなかった。そんな考えを自分の脳が削除した。……でもなんで?


「でも、僕は生まれも育ちもここであって、昨日までこの学校にいた。因みに昨日夕維と帰ったよ」

「嘘でしょ?だって昨日…………」


なんで…?昨日帰った記憶がない……まさか岡崎さんの言ってることは正しいの?


「…岡崎さん」

「澪…僕の名前は澪だよ。」

「澪…その話聞かせて」

「…うん。実は……」


澪はゆっくり話し始めた。

自分と夕維との関係、両親のこと…そして、朝見た夢の話…

ゆっくりと話された内容を夕維は静かに聞いていた。

今、口を挟んだら澪は壊れてしまいそうだったから…

一日で、こんなにも心をズタズタにさせる出来事なんてないかと思ったけどあったんだね


「…ってコトがあったんだ。」

「私と澪との関係は分かったけど…やっぱり記憶はないみたい」


そっか…と澪は呟いて窓越しに空をみた。

空は快晴…雲一つない――僕の心と正反対だ…。


「うーん、ということは、昨日の夜に澪を今の家に移動させた人がいるってことだよね…」

「そうだね…」

「と言うことはその人は澪との記憶持ってるんじゃない?」

「――っ!!そうか、そいつを捜せばいいんだ」

「でも……これだけ完璧にみんなから澪に関することを消したんだからそう簡単には見つからないよ」


うーん…考えてるだけじゃダメなんだと思うケド…イイ案が見当たらない―――一体誰がこんなことをしたんだ……

謎は深まるばかり…どうしたらいいんだ?

そんなことを考えてる間にチャイムが鳴った。

まるで、僕にこの事を考えさせない様に……


「岡崎さん」

「なぁに?」


あくまで僕は学校では仮面を外さない…
夕維と2人だけの時以外は――外しても意味がないから


「貴方って何処から引っ越して来たの?」

「えっ?…東京から」


違う――ホントはここなんだ


「東京から引っ越して来たの!?」


やめてよ、自分を見失いそうだから…


「うっうん」

「いいなぁ〜ここ“さいたま”だけど田舎に近いじゃんだから東京とか羨ましいんだよね」


確かにそれは思う…

この中学に通う大半の生徒は弥生小出身だ―

その弥生小は校舎の反対側に人工川があり、田んぼ、沼、畑等々、様々なものがあった。まぁ、所謂自然がいっぱいだった

実際そこで、野菜を育てたし………ジャガイモが蟻に食われてて悲惨なことがあったとはあえて言わない―――


「ふーんじゃあ、友達とか普通に会えるんだ」

「…まあね」


いるっていったらいるけど……嫌だ会いたくない。

もう僕のことなんて覚えていないんだから―――

そんなことを考えている澪とは裏腹にドンドン話を進めていく


「岡崎さん?聞いてる」

「へ?……ごめん聞いてなかった」

「…大丈夫?」


何に対して大丈夫なの?意味分かんない


「なにが?」

「顔色悪いから」


え?顔色?

澪は女子に鏡を貸して貰い、自分の顔を見た

いつもと変わらない気がする外見は……でも中身は?


「そうかもしれないけど大丈夫だよ!」


嘘、嘘、嘘…絶対『ココロ』は少しずつ崩れていく――大丈夫じゃない…助けて誰か―――僕を


「ホントにぃ?」

「うん、少し考え事してただけだから」


これ以上迷惑は掛けられない

――掛けたくないのかもしれない、昨日までだったらそんなことなかったのに…

遠くの方で沙姫がつまらないって、呟いたのは誰も知らない

そのまま時間は過ぎ、いつの間にか放課後になっていた。


「澪一緒に帰りましょ?」

「うん」


澪は立ち上がり、みんなに挨拶してから夕維と一緒に校舎を出た。

家までの道がヤケに近かった…行きはあんなに遠かったのに――

やっぱり僕は夕維がいることが嬉しいのかもしれない…いつからだろう自分が独りが嫌いになったのは


「へぇ〜ここが澪の家」

「あぁ、昨日までここにお母さんがいて、お父さんがいて、お姉ちゃんたちがいたのに…一気に生活感が無くなった……」

「両親は………澪悲しいんなら泣きなよ。その方がスッキリするよ」


えっ?僕そんな泣きそうな顔してたの?


「ぅん……」


でも、なかなか涙は流れない…まるで、夕維に見られるのを拒んでるような感じ


「私は澪の味方…例え記憶が無くたって私は絶対澪に近付いてたはずだから」

「……な…ぜ?」

「澪すごくカッコいいもん、澪が男だったら絶対惚れてた。」


心の記憶はないけれど躯は無意識に澪を捜していた

――朝に引っ越して来たと嘘を着いた澪を…昼休みにちゃんと話してくれた澪を……

あの時私にそのことを話たんだから、何かあるんだね


「嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ………独りは嫌だ…怖い」

「澪っ!!絶対居るから澪の側に居るから……お願いだから壊れないで」


せっかく見つけた大事な大事な『ヒト』あなたが壊れればきっと私も壊れてしまう


「夕維っ……寂しいよぉ…お母さんお父さんお姉ちゃん」


確かに家族を亡くすより悲しいかもしれない、両親は生きているのに逢えないなんて……


「一緒に手掛かりを捜そうよ!!」

「……………うん、ごめんね」

「気にしないよ…ところで、朝置いてあった封筒は?」


あそこ…と弱々しく微笑み机の上を指差した。

夕維は立ち上がり、その封筒を取って来た

澪はその封筒を見ようとしない

そのまま夕維は封筒に入ってた手紙を読み始めた


「……。」

「夕維?」


読み始めてから少したった頃夕維は手紙を握り締めていた

だいぶ復活して来たので、ふと澪が夕維の顔を覗くと夕維の顔は怖かった


澪、私コイツらむかついて来た。すごく殴りたい


……聞いた?

“一応”優等生である夕維から殴りたいって言葉が出て来たんだけど…

どうすればいいかな?


「夕維が殴ってもしょうがないんだ。僕が殴らなきゃ!」


いやいやいや、そんなことを言うつもりなんてなかったんだけど

そのセリフに夕維は目を輝かせて、じゃあ遠慮するね!なんて笑顔で答えてくれちゃったよ!

しかも、真っ黒いオーラが後ろにあるし…

もうヤダ…って想ってしまう自分がいるんだけど


同時刻―――闇の組織


「岡崎澪の反応はどうだったんだい?」

「なんか、ムカつくぐらい冷静だった。でもね…」


沙姫は嬉しそうに口許をニヤリとし続けた


「幼馴染みの仲本夕維の時は流石にショックうけてたよ。」

「……そうか」

「ねぇ、なんでそんな気になるの?」

「沙姫には関係ないことさ」


そう呟き、誠は席を立ち部屋へと歩いて行った

その時に沙姫が誠とアイツの関係は何なの?と呟く声は恐らくは誠には聞こえなかっただろう―――


「澪、すまない。辛い思いをさせたな。夕維もすまない。……俺って最低かな?」


なんて、ネガティブなんだろう。――それは決まってるじゃないか。

後悔をしているから。澪の記憶を消したことを

その謝りは誰にも聞かれることなく闇に溶け込んだ。

頑張って俺捜してくれ澪、そして俺を治してくれ。

君のために…

いや俺のために…





☆あとがき☆

真実を知った彼女は
助けの手を出す……
実は真実って凄くむごいんです。